梅田サイファー KZ の新アルバム in sync の解説・考察

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梅田サイファー KZ の新アルバム in sync の解説・考察 曲の考察・解説

2025年2月26日、梅田サイファー所属のラッパーKZから新アルバム「in sync」がリリースされました。
全曲コラボ楽曲の計8曲、解説・考察させていただきます!

KZ の基本情報

KZは大阪出身、大坂梅田を発とするサイファー、梅田サイファーに所属するラッパーです。

リリシズムを感じさせるラップが魅力です。

梅田サイファーの楽曲のほかに、個人でも2017年のアルバム「(not only) Two Sides」から、今回2025年リリースの「in sync」までの8年間で9つのアルバムをリリースしています。

制作意欲の高さと、ラップが好きだという気持ちが伝わってきますよね。

「8耐」と呼ばれる、8時間耐久のラップイベントを同梅田サイファーのメンバーpekoと実施した経歴もあります。

今後の活動も要チェックのラッパーです。

新アルバム「in sync」の基本情報

リリースはいつ?

2025年2月26日にリリースされています!

8曲とも新曲です!

収録曲


KZ本人がツイートをしているように、今回は全曲がコラボ楽曲という初の試み。

新しいことをいろいろやった、と発言されています。

ビートはすべてF1REWORKSです。

それぞれ、参加アーティストからのコメントもKZさんがツイートされていたのでそちらも紹介しつつ解説します!

アルバムのタイトル「in sync」の意味は?

sync は、synchronization の略で同期や同調などの意味を持ちます。

in sync (synchronization) で、同期している状態を表します。

なぜ、このようなタイトルにしたのか、考察の余地がさらにあります。

rock me baby / KZ & Arrow

一曲目は rock me baby / KZ & Arrowです。

女性シンガーArrow とコラボした楽曲です。

Arrow 自身が語るように、「スパイスが効いたスウィートな作品」になっています。

メロウなビートに、Arrowの声が「かわいい」を引き立てています。

フックのArrowの声とは対照的に、KZの声は相変わらずシリアスです。

けれどもそのシリアスな声で、

見上げた空に打ち上げ花火

夏と君 好きだぜ my honey

rock me baby / KZ & Arrow

なんて甘酸っぱいリリックを綴ります。

KZの声がスパイスになった、スウィートな作品です。

two count / KZ, SISUI & BIG KRAW

2曲目に収録されているのは two count / KZ, SISUI & BIG KRAWです。

SISUI は、歌詞のテーマを【人生はギャンブルだ!】であったと語っています。

F1REWORKSの切ないビートに、チルを感じさせる男女ボーカルのフック、そこに合わさるKZのリリックは迫真で、KZらしさ溢れるバースが魅力です。

みんな幸せ ただの理想論

誰か蹴落とし wanna be a HERO

two count / KZ, SISUI & BIG KRAW

KZ は自身の妹についての過去を歌ったうえで、このように表現します。

出自を背景にした歌詞だと、説得力が違いますね。

また、「365 7 そして24」

つまり、365日、7日そして24時間

一年と一週間、一日を数字だけで表した表現です。

お洒落な表現ですよね。

数字遊びが得意なKZらしさを感じるバースでした。

タイトルの「two count」にはどのような意味が込められているのでしょうか、さらに考察の余地があります。

TOKYO / KZ, SonSon & ウェルカムマン

3曲目は TOKYO / SonSon & ウェルカムマンです。

センチメンタルなビートに、SonSon の主張しすぎないフックがベストマッチですね。

思い出はいつも綺麗なまま

僕は静かに汚れたかな

君だけ若く 子供のまま

僕だけずるく大人になった

TOKYO / KZ, SonSon & ウェルカムマン

意図的かわかりませんがジュディマリを引用しつつ、

君と僕を、綺麗と汚いで対比しているのがシニカルでKZらしさを感じますね。

また「一人で見上げた銀座のSEIKO」は、文字通り聞けば時計屋のSEIKOですが、成功も暗示しているように感じます。

「Let’s Let’s Let’s get it on 」成功に向けて気持ちを鼓舞する様子が伝わってきます。

落ち着いたビートに落ち着いたラップ、だけど心のうちは燃えている、そんな魅力のある楽曲です!

HONA-IKOKA / KZ & Daiki Okada

4曲目はHONA-IKOKA / KZ & Daiki Okadaです。

疾走感があり、後半はEDMを感じさせるようなF1REWORKSの魅力が溢れるビートです。

別れの切なさを乗り越えていくストーリー性のある楽曲です。

君がいた右側 教えられた生き方

今は空いた右側 

何しても意味がない

HONA-IKOKA / KZ & Daiki Okada

君と別れた喪失感が描かれています。

思い出の影をなぞってみても

なくしたものばっか数えていても

戻れはしないぜ過去にはきっと

なら歌にかえる あの日の傷を

HONA-IKOKA / KZ & Daiki Okada

しかし、すでに起こった別れについて考えていてもしょうがない、過去には戻れないことを描きます。

その後に続く「Believe my life」

は、自分自身を鼓舞し、言い聞かせているようです。

過去を振り切って進む力をくれる曲です。

Last Phrase / KZ & やました りな

5曲目に収録されているのはLast Phrase / KZ & やました りな です。

4曲目のHONA-IKOKA / KZ & Daiki Okadaに続いて、EDMの雰囲気も漂いつつ切ないビートです。

曲名の「Last Phrase」は、最後の言葉を口に出すことのできない二人の関係を示していると考えられます。

言わなきゃいけないラストフレーズを

ためらったまま切り出せないふたり

思い出がまだやり直せるって

袖を引っ張って話してくれないよ

Last Phrase / KZ & やました りな

やました りなのボーカル部分です。

破綻しかかっている現在の二人が、過去の良かった記憶に縋って別れられない様子を示しています。

それでも「もう戻れない」と先へ進んでいく様子を表します。

4曲目のHONA-IKOKAと嫌でも比較してしまう歌詞ですね。

HONA-IKOKAは、過去を振り切って進む力強さを感じる一方、Last Phrase は未練がありつつもゆっくりと次へ進んでいく様子を表しています。

結局どちらも前へ進んでいくのが、KZの楽曲らしくてよいですね。

shikitari / KZ & AMY McFLY

6曲目はshikitari / KZ & AMY McFLYです。

昔のしきたりと、新しい時代の変化を歌っている面白い曲だと感じました。

前半、KZは「街で教えられたしきたり」について歌います。

「どんな人も挨拶」「友達が何よりでファミリーが大事」

ただ、「だんだんただただかわってく」このフレーズをキーワードとして変わっていきます。

後半はAMY McFLYが自身の出自を歌いつつも、時代が変わっていくことを歌います。

ここでもキーワードは「だんだんただただかわっていく」です。

KZ と AMY McFLY それぞれの過去を想像させる一方、それもだんだん変わっていく。

「永遠に続くものはない」そんなメッセージが「shikitari」には込められているように感じられます。

夜と朝のすき間に / KZ, RESi & 7avi sntime

7曲目は夜と朝のすき間に / KZ, RESi & 7avi sntimeです。

7avi sntime はこの曲のテーマについてKZから「朝ごはん」を示されたと言います。

ゆったり気だるげなボーカルとビート、朝と言えばもう少し元気よイメージを想像される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

RESi はその疑問に答えます。

「ラッパーの朝と言えばパーティー終わり。あの何とも言えない空気を表現した」

テーマの「朝ごはん」は規則正しく寝た後ではなく、夜更かしして遊んだ後の朝ご飯という解釈でよさそうですね。

夜と朝のすき間、眠さを感じながらも遊べない、やらなきゃいけないことがある、微睡ながらそんなことを考える楽曲です。

ふわふわした浮遊感が、聴き手それぞれの「夜更かしの記憶」を想起させますね。

ちょうどいいvibe / KZ & シトナユイ

8曲目、アルバム「in sync」の最後に収録されているのは ちょうどいいvibe / KZ & シトナユイ です。

シトナユイは子の楽曲について、「雨でも晴れでもないグレーで曖昧な状況でも、それを”今のままでいいじゃん”と肯定的にとらえる」歌詞にしたと語っています。

曖昧な気持ちだけ away

雨でも晴れでもない

・・・

Rain or shine

結局”whatever”でdone

ちょうどいいvibe / KZ & シトナユイ

雨でも晴れでもない、どっちつかずの状況で進んでいく気持ちを表現しています。

前半、KZがあいまいな関係について具体的にラップをし、それを抽象化してシトナユイが歌っています。

ビートには雨音のような環境音がサンプリングされており、「天気」を感じさせる曲です。

感想

全曲コラボ楽曲、KZ自身もこれからの可能性を模索したアルバムであるように感じます。

もともと売れているアーティストではなく、売り出し中のアーティストとコラボしている点も「可能性」をテーマに感じるようなアルバムです。

個人的にKZの魅力は迫真に迫るリリックとシンプルだけどエモーショナルな韻の踏み方だと思っています。

そのため、今回のLast Phrase のように、切ないビート×フックを女性が歌いKZのバースのアクセントにする。

このような形がKZのバースを引き立てるように感じました。

次回以降、今回のコラボアーティストとの再演はあるのか、はたまた新たな可能性を追って新しいアーティストとコラボしていくのか楽しみに待ちたいと思います!

今回は梅田サイファー KZ の新アルバム in sync の解説・考察と題して、in sync に収録されている8曲を紹介させていただきました。

KZの新たな挑戦に目が離せません。

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